静かな坂道

登るも下るも静かな坂道がいい

ひらめきや気づきを、そのままにしてはいけない。

今週のお題「人生変わった瞬間」

 

外からの刺激に対して「ひらめき」や「気づき」があり、

そのひらめきや気づきを、

どう表現するか、どのようにアピールするかによって、

その後の人生は変わってくると思うのです。

 

 

大学4年生の秋。

私は雑誌づくりに携わりたくて、

出版社を何社か受けたものの、

全て不採用。

 

さて、どうしたものかと考えあぐねていた、ある日曜日の朝。

 

たまたま目にした毎日新聞の日曜版。

そこで、

「編集部拝見」というコーナーで紹介されていた

とある雑誌の編集部。

 

とある雑誌の内容はもちろん、

その編集方針に感銘を受け、

ココしかない! と思い、

その編集部へ勝手に履歴書を送りました。

 

アピールする手段はどうあれ、

日曜版を見た私はその時、何かを感じたのです。

「あぁ、良い編集部ですねぇ」だけではなく、

自分の波長と合った、というか、

絶対に逃してはいけない!、という何かを感じたのです。

 

 

数日後、毎日新聞の日曜版に出ていたと思しき編集長から、

「とりあえず、バイトで良ければ、来てみて」と電話が!

 

次の日の朝、渋谷にあるその出版社へ行ってみました。

 

その出版社の建物は、

2階建てアパートの上下2部屋ずつを

ぶち抜いたような作り。

 

1階の事務員の女性に「編集部は2階ね」と言われ、

見上げた階段の上のフロアは薄暗く、

人の気配もなし。

 

上がって編集部を覗いてみると、

床に死体袋(寝袋で寝ていた編集部員)が3つ、転がっていました。

 

これは、帰ったほうが良さそうだ・・・、と思ったところで、

部屋の奥の方で、

ワープロ(1987年当時)のディスプレイの光に照らされた

あの編集長の顔が、ほんのり見えました。

(当時の光景は、今でも細部にわたって覚えています)

 

あの日から、普通の人が送るであろう人生ではなく、

私の冒険者じみた人生が始まったのです。

 

ジャングルや砂漠を走ったり

少数民族の方々と生活を共にしたり、

雪山で遭難しかけたり、

豪雨で10日間も足止めを食らったり、

なぜかショットガンで撃たれたり、

運転していた車が横転して、湖に沈みそうになったり・・・。

 

あの日、毎日新聞の日曜版を見ただけでなく、

絶対に逃してはいけない、と強く思えたからこそ、

普通の人生とは少し違う、

濃密で素晴らしい時間を過ごすことができたと思うのです。

 

私はその出版社に、約12年間在籍していました。

 

私がその出版社に入って10年を過ぎたあたりから、

雑誌の売れ行きが下がり始め、

次の手を提案するも却下され、

社長との関係も悪くなり、

辞めざるを得なかった状況となったのも事実ですが

9.11というとてもショッキングな出来事もあり、

タイミングとしては、今の生き方を考え直す時期でもありました。

 

ただこの時、失うものはありませんでした。

バツイチにもなっていたし、

養わなければならなかったのは、犬1匹でしたから。

 

そしてこの時、

ダラダラと犬と二人で過ごしながらも

またしても新しい刺激を受けた私は、

新しい人生を歩み始めることができました。

 

 

 

今回のお題「人生変わった瞬間」を考えてみたら、

ちょっと特異かもしれませんが、

私はいい人生を送っていることを改めて実感できました。

 

たとえこの瞬間に死んでしまっても、

自分の荷物の処分や、

クルマの名義変更などの後処理で

誰かに迷惑をかけるので申し訳なく思いますが、

人生に悔いはありません。

 

ただもしかして、今後

何かを感じる刺激を受けたとしたら、

絶対に逃すことなく、人生を変えていくのだと思います。